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【連載】らじつう編集部がメーカーさんに聞いてみた・ホビーショー番外編「タミヤ TRF421」

Interviewing and writing : C.E Shinji Katagir

 

 らじつう編集部がメーカーさんに直接質問を投げかける

 「らじつう編集部がメーカーさんに聞いてみた」

 注目の製品についてメーカー担当者に直接、ウェブサイトの商品説明よりも深堀した内容をらじつう編集部が聞いていきます!

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 今回は番外編として第62回静岡ホビーショーの取材中にお伺いした、注目度が高いタミヤ TRF421について、タミヤ開発担当の方に伺ったお話を切り出してお伝えいたします。

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 数年ぶりのタミヤツーリングカーのフラッグシップモデルとして登場したハイエンドツーリングカー・TRF421について、大幅な変更の背景や今回のモデルの特長、開発者として伝えたいことなど、らじつう編集部が聞いてみました!

※取材の中で伺った様々なお話の中から、TRF421に関する部分だけを会話形式にて編集部がまとめた形でお届けいたします。実際にお話いただいた方の発言そのままではありませんことをご注意ください。

今回お話を伺ったのは?:

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第62回静岡ホビーショー タミヤブース タミヤ開発担当者様


らじつう編集部がメーカーさんに聞いてみた!

番外編「タミヤ TRF421」

 TRF420Xから約2年のインターバルでついにブランニュープラットフォームとなって登場したTRF421ですが、サスペンション形状だけでなくあらゆる部分が刷新されているよう見えますが、TRF420Xと違い、今回フルモデルチェンジになった背景を教えていただけますか?

 まず、タミヤとしてハイエンドモデルは象徴ともいうべき存在なので途絶えることなく続けていくものだということは前提としてあります。しかし、そのモデルサイクルは他社さんのように毎年刷新という形にしてしまうと、様々なコスト上昇でキット価格が10万円にもなっているものを、毎年ユーザーが買ってくれるのか?という疑問がありました。更に言えば一度生み出したプラットフォームは我々もユーザーさんも多く走らせていくことで、「マシンを理解していく」という状況に近づいていくのですが、その状況に近づくには数か月という時間ではなく年単位の時間が必要であり、大きく変更を行った場合は特に時間がかかると私は考えています。ですので、先のTRF420が生み出されてから多くの走行時間と多くのユーザーさんからのフィードバックを参考に、420Xが生まれました。420Xはあくまで420のエボリューションモデルなので、420ユーザーの方も新パーツで更に新しい走行フィーリングを楽しんでいただけのではないと感じています。そうして420プラットフォームは多くのユーザーさんに楽しんでいたけましたし、メーカーとしてはそろそろ新しい提案をしてもよいのではないか?ということでブランニューな構成となりました。

 なるほど。一度生み出されたプラットフォームは理解をした上で進化させる余地があるのだから、モデルサイクルは長めになっているということなのですね。ユーザーとしても手にしたものが長く楽しめる状況はとても歓迎されるべきことなので素晴らしい方針ですね!

 では、次に今回のTRF421は今までのサスペンション形式と違い、グローバルスタンダードともいうべきピポッド型の上下Aアーム型を採用されていたり、ワンタッチ交換のスパーギアなどいえば他社と似たような構成や機構が多く取り入れられていますが、今回の開発コンセプトはどのようなものだったのでしょうか?

 今回、プラットフォームをゼロから見直しにあたり、やはり世界の競技シーンで走行しているプロトタイプのツーリングカーやそこから市販されたモデルというのはもちろん確認しています。多くの奇抜なアイデアや性能を追求した構造など本当に多くのトライがされていることも認識しています。そんな中で私が考える一番よい形というものを、前モデルを開発する中で感じた不足点と照らし合わせながら各要素を組み合わせいきました。その成果が今回のTRF421となります。

 なお、他社モデルのよいところはよい製品になるならどんどん取り入れます。このマシンを発表した直後に他社マシンに似ているという話があがっていることも認識していますが、実現したい走りのイメージに対して最適な構成を私が自信をもって組み合わせて設計したマシンですので、ぜひ手に取っていただいてこの車が他社ツーリングカーのコピーなのかどうか感じていただければと考えています。

 なるほど。見た目が似ていたとしても、1台の車としてどう機能させるのか?という点を常にイメージされて設計されたのですね。そういう意味では確かに前後・上下Aアームなのですがロアアームはよくあるカーボン素材でなく樹脂素材ですし、アッパーAアームも実物をみるとかかなり細身にデザインされているように感じます。このような構成になった理由を教えていだけますか?

 まず、420XのIアーム型のサスペンションで不満だったポイントを洗い出しました。Iアーム型の場合、どうしてもアッパーアームは1本のアームになりロアアームに比べて剛性が期待できないものです。さらにいえばその剛性が足りないことによりあれ以上サスペンションの長さを延長することも不可能でした。ですので、開発中にはアッパーアームを複数本のターンバックル式のアームで構成するものももちろんテストしていますが、調整が難しくなるだけでなく重量的にも有利には働きませんでした。ですので、元々Iアーム1本で走行できていた状況からA型のアッパーアームに変更することで足りない剛性を確保するというのが最初のポイントとなりました。ですが、Iアームでも走行はできていたわけですし、もうちょっとだけ剛性がほしいというレベルだったのでアッパーアームは必要な剛性が確保できるギリギリの細さと軽さを追求しました。それが見た目が細く見える理由です。
 
 次にロアアームですが、他社ツーリングカーでカーボン素材が使われいることは承知していますが、テストする中で樹脂でも同様の性能を出せることがわかったので樹脂を採用したということと、このロアアームは正直消耗品だと考えています。ですので、アフターパーツの価格を抑えるという意味でも樹脂一択だなということで採用しました。

 サスペンションは上下のアームが組み合わせて動作するものですし、動作時に欲しい強度や剛性が確保できればよいわけです。また、もうちょっとサスペンションの長さを増やしたかったことも今回の構成とすることで実現できました。それに合わせて駆動系のパーツも刷新しています。

 なるほど。前モデルでの改良したいポイントが明確だったので、それを改善するために見つけ出したレイアウトであり、各パーツの形状や材質も継続して使っていくことまで考慮されたものだったんですね。ちなみに駆動系まわりでは他社モデルではデフカバー装着されているキットがよく見られますが、このモデルはデフカバーはないのですか?

 はい。むき出しになります。これは何か異物がデフに近づいてきたときに、カバーがあると異物の逃げ先がなくなりますし、今回の構造だと左右のブロックをカバーなどで左右接続せずとも剛性や強度は確保できているのであえてデフカバーレスの構造にしました。やはりツーリングカーは少しでも軽いほうが有利というのもありますしね。

 小さな重量でも積み重なれば大きなものになりますしね。また、異物の逃げ先というお話はとても興味深いところです。密閉ではない以上入ってしまうと破損にもつながる点なので貴重なお話ありがとうございます。

 次に420Xではシャーシが2種類同梱されていましが、今回はカーボンシャーシのみということですがこれにもなにか理由がありますでしょうか? 

 前回のモデルの2タイプにシャーシ同梱については様々なご意見があったことは承知しておりますし、可能であれば2タイプ同梱するというのもよいかとは考えたのですが、キット価格を抑えるという意味でいうとやはりシャーシは1枚だけというのが現実的な回答となります。

 では、アルミとカーボンどちらを標準とすべきか?という点ですが、開発者の私の解釈ではアルミシャーシが必要になるシチュエーションは100回の走行機会があったとしてせいぜい10回から20回ぐらいしかないと考えています。多くの場面ではカーボンシャーシでこのモデルが持つポテンシャルを引き出すことができると判断してカーボンシャーシの採用を決めました。

 しかし、それでは選択肢が少なくなってしまうというので、アッパーデッキを2種類同梱することにいたしました。ワンピースタイプとセパレートタイプで走行特性が大きく異なりますので、この使い分けにより先ほど申し上げた10回か20回アルミシャーシが欲しいというシチュエーションの中の半分ぐらいはアッパーデッキの選択で対応できると想定しています。

 非常の興味深いお話ありがとうございます。ちなみにアッパーデッキのお話がでたのでTRF421の走行特性についてもお伺いしたいのですが、TA08Rのお話を伺ったときに、シャーシを意図的にねじれさせることで走行性能を高めることを想定されており、アッパーデッキはそのねじれを調整するためのものと考えているということでしたが、このTRF421でも同様の考え方なのでしょうか?

 はい。全く同じ考え方で設計しています。今回サスペンションの剛性が高まったのでタイヤをより使えるようになっているということもあり、マシン全体で考えるとどこかが強くなればどこかで逃がしが必要になるというお話の中で、シャーシはその逃げを作る一つの要素となるのです。ですが、ただ逃がしてばかりでは前に進みませんから、どのぐらい逃がすのか?を調整するのがアッパーデッキという思想です。基本的にTRF421は「楽に真っすぐ走る」というコンセプトで開発しています。すべての要素はそのために用意したものとも言えます。ですので、設計者としてはシャーシ上部に橋を架ける形になるワンピースタイプを想定して開発してきましたが、もっとクイックに動いてほしいというユーザーさんがいるの事実なのでセパレートタイプを用意したという次第です。ですので、まずはワンピースタイプで走行してみていただいて、この車の基本特性を把握していただければと考えおります。

 「楽に真っすぐ走る」というコンセプトとても操縦がしやすそうなイメージが湧きますが、「もっと曲がってほしい!」という方がいるのも事実なのでアッパーデッキで調整ができるというのはとてもよいトライですね!

 ここまでお話伺ってきましたが、こういう車にしたい!というところへ各要素を組み合わせられていることはとても理解できたのですが、TRF421ならでは!というポイントがないようにも正直感じたのですが、ここは他社とは明らかに違う!というポイントあれば教えてください。

 これも考え方次第ですが、奇抜な構造やアイデアというのはとても素晴らしいトライだと私も考えますが、確実に理想を実現する手段としてはリスキーだなと。タミヤというメーカーだからというのもありますが、性能の安定感というかいろいろなレベルの方がハイエンドモデルを走らせてみたい!と手に取っていただくものなので、構成要素は基本コンサバティブでよいというのが私の見解です。

 そんな中でTRF421の特長というのがスタビライザーになります。取り付け方も独自となっていますが、今回の取り付け方で欲しい性能がでるスタビライザーを専用に製造してもらいました。製造してもらう工場から「そんなの無理!」と言われましたが、なんとか実現しました。正直、自分の中では唯一無二の素材でできたスタビライザーです。TRF421の走りを構成する大きな要素なので、まずは説明書の数値どおりに組み立てしてフィーリングを感じたいただければと考えております。

 そんなすごいスタビライザーが搭載されているのですね!それだけでも走らせてみたくなります。ちなみに「説明書どおりに」というお話がありましたが、これに限らずですが開発されたキットの説明書の数値をまずは守るというのは大切なことなのでしょうか?

 これもあくまで設計者・開発者目線でのお話になりますが、このモデルは特にハイエンドモデルになりますので、部品ひとつひとつや各部の設定数値には一切妥協をしていません。多くの時間のテスト走行も行っていますし、多くの試作パーツも試しました。その結果としてこのマシンが一番よく走ってくれるパーツを選び、各部の設定値を作り上げています。もちろん、ユーザーさんの好みというのもあるでしょうから変更が必要ないとは言いませんが、まず基準を知ると意味で説明書どおりに組み上げていただき、走行させてみて欲しいと考えています。そのうえでフィーリングバックをいただけると次のモデルの貴重な情報になりますね。

 なるほど。基準を知るというのはどんな物事に取り組み時にも大切なことですよね!

 そうなりますと、今回のモデルもロングライフサイクルのモデルになるように感じますがいかがでしょうか?

 最初に話したとおり、ブランニューで生み出したばかりですので、まずこのマシンを私もそしてユーザーさんも知っていく時間を多く取りたいと考えています。そのうえで次はエボリューションモデルを開発していき、更にこのモデルを楽しんでいただけるようにやっていきたいと考えています。

 ですので、だいたいですが1モデルが3年~4年はベーシックな部分は同じ形で進んでいくのではないかな?と現時点では想定しています。もちろんなにか状況が変われば早まったり遅くなったりすることもありますが。

 商売である以上、色々な事情があるでしょうが、ロングライフサイクルのモデルということですとユーザーとしても手にしてみようかな?と考えやすくなりますね。

 ここまで様々なお話を伺ってきたのですが、このTRF421はどんなユーザーさんを想定したモデルなのか最後に教えていただけますか?

 タミヤというメーカーがワークス体制でレース活動を行ってはいませんが、設計者としてはやはり最先端の性能を追い求めたいのは正直なところであり、今回のTRF421は他社と比べて全く見劣りしないモデルになった自負があります。

 ですので、世界中のタミヤモデルの愛好家の皆様はもちろん、競技ツーリングカーユーザーすべての方に手に取っていただきたいモデルとして開発をしました。それはリアボディポストの形状にもいえまして、タミヤ製ボディを使えることと、競技用のボディが使えることを両立させる形で新設計しています。

 すべてのツーリングカーユーザーの方に自信をもって送り出すモデルとなります。

 今回のTRF421が本当に自信作であることが伝わってくるお話ありがとうございました。

 次なるモデルも期待しております!

 TRF421はこれから皆様の手元に届けするフェーズになっていますので、次なるマシンも続々開発しています。ぜひご期待ください。

ここまで色々とお話いただきありがとうございました。TRF421の発売楽しみにしております!
ありがとうございました!

編集後記

 今回は第62回静岡ホビーショーのタミヤブースで伺ったお話の中から、TRF421の部分だけを切り出してお伝えいたしました。TRF421についてだけでなく、開発の考え方など貴重なお話をお伺いすることができました。

 前回のTA08Rの際も番外編として切り出しさせていただきましたが、今回もタミヤの開発担当の方の生の声としてお伝えできればと考えて、番外編として切り出すことにいたしました。TRF421の購入の参考になれば幸いです。


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